久間田洋一さんと八田隆夫さんは同じ会社に同期入社したことをきっかけに知り合い、お互いに退職した今でも親友でありライバルでもある微妙な関係が続いています。在職中の二人は同じ営業部に属して日々の仕事ではもちろん、昇進でも激しい競争を繰り広げていました。係長への昇進では久間田さんが一歩リードすると課長への昇進で八田さんが抜き返すという具合に昇進競争は抜きつ抜かれつを繰り返し、最後の支店長への昇進は同時でお互い痛み分けという形で終わりました。それでも神奈川支店長だった久間田さんは内心自分が勝ったと今でも思っており、大阪支店長だった八田さんは反対に自分が勝ったと信じているのでした。
このように在職中を通じてずっとライバル関係であった二人の競争は仕事だけでなく、プライベートにも及んでいました。人生の大きな転機となる結婚や子どもの誕生、果てはマイホームの実現までもお互いに激しく競い合ってきたのです。先に結婚したのは久間田さんでした。たまたま知人から勧められた良い縁談があり、お見合いでトントン拍子に結婚が決まったのです。それを聞いた八田さんは負けてはならじと当時好意を持ちながら気持ちを伝えられないでいた女性に思い切って告白し、猛アタックをかけて久間田さんから1年遅れで結婚にこぎ着けたのでした。
先に子どもを授かったのは1年遅れで結婚した八田さんの方でした。当時の久間田さんは家庭より仕事優先の姿勢が明確だったのですが、八田夫妻に子どもができたことを聞いてそれまでの方針を180度転換しました。昨日まで仕事最優先だった夫が急に子どもを欲しがる姿に、久間田さんの奥さんは大いに戸惑ったものです。その結果、八田夫妻には4月に男の子が生まれ、久間田夫妻には翌年の3月に男の子が生まれ、お互いの子どもは辛うじて同学年になることができたのでした。
マイホームを実現したのは久間田さんが先でした。当時の年収から考えると少し無理があるように思えた新築のマンションを思い切って購入する決断をしたのです。それを知った八田さんは奥さんが止めるのも聞かず同じマンションの購入を決めたのでした。しかも同じランクの部屋では嫌だとあえて久間田さんより上の階で価格の高い部屋を選んだことが八田さんの負けず嫌いの性格をよく表しています。

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